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矯正歯科医院経営「消費者行動の違い」

消費者行動の違い

経営という大きなカテゴリー、また歯科というカテゴリーで考えると一般歯科医院経営も矯正専門歯科経営も同じという方も多くいらっしゃいます。

しかし、そもそも解決したいことが違うわけで、一般歯科医院の経営と矯正専門医院の経営は全く別ものだと考えています。

 

緊急性と重要性

消費者(患者)行動から考えてみたいと思います。「歯が痛い」と医院探しをするAさん、「歯ならびが気になっている」Bさん。医院探しをするという行動は同じですが、緊急性から考えると全く違ってきます。

一般歯科では、「今すぐなんとかしたい」というAさんの緊急性の高い悩みを解決してあげます。一方、「歯ならびが気になっている」Bさんにとって重要なことになっていますが、緊急性は決して高いとは言えません。

緊急性の高い治療を中心にしている一般歯科と緊急性が高くない治療を中心にしている矯正専門医院。マーケティング手法は同じでいいのでしょうか?

矯正歯科治療を考えている消費者へのマーケティングは、緊急性ではなく、歯ならび治療の重要性を理解してもらう、ことが大切になります。緊急性を高めるために「床矯正」という手法をとられている歯科医院もあるようですが。。。

矯正歯科治療は、ほとんどの場合緊急性は高くないために、重要性やメリットを伝えていくことをしなければいけません。そのために、初診相談というステップをもうけ、専門家が重要性をきちんと伝え、重要性を理解してもらっているわけです。

重要性を高めていくマーケティングが必要な矯正歯科治療と緊急性が高い治療に対応していく一般歯科のマーケティングは、違ってきて当然ということになります。

 

AISAS(アイサス)

インターネットが普及する以前は、AIDMAという消費行動理論が中心でしたが、2004年に電通が提唱したAISASが現在の消費者の購買行動を説明するモデルになっています。
Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有) の頭文字を取ったものになります。
AIDMAからDesire(欲求)とMemory(記憶)がなくなり、3番目のプロセスとして「Search」が、Action(購買)後のプロセスとして「Share」が追加されています。
AISASにおける「Search」は、製品やサービスに関心をもった消費者が、「購入前にGoogleなどの検索サービスで情報を調べる」プロセスになります。また、最後の「Share」は、ブログやSNS、クチコミサイトなどで、製品やサービスの感想などの情報を投稿(情報共有)するプロセスになります。
矯正歯科治療に当てはめてみると、Attention(検診や誰かに指摘、広告等をみて歯ならびが気になりだす)、Interest(きれいな歯ならびになるのかなと興味をもつ)、Search(歯ならび、矯正歯科治療について検索する)、Action(初診相談、治療をはじめる)、Share(矯正治療に関して情報発信)という流れになります。

 

緊急性とAISAS

緊急性が高い治療の場合には、Search(検索)の時間は短くなります。とにかく痛みを今すぐなんとかしたい場合には、すぐに対応してくれる所はどこか、ということで検索します。当然検索する時間は短くなります。

一方、緊急性が高くない治療の場合には、なんとなく情報収集をしますので、検索する時間は長く、複数回にわたります。また、ネット上での検索だけではなく、知人に聞く等のSearchにも時間をかけることになります。

 

矯正治療をはじめるまでの患者ステージ

矯正歯科治療を開始するまでの患者ステージは、大きく4つに分類することができます。

1.歯ならびが気になりだす(Attention)

アメリカでは10代の約半数が矯正歯科治療をしているといわれていまが、日本では数パーセントという現状ではないでしょうか。
歯ならび治療に興味をもってもらうためのマーケティング活動は、直接クリニックの利益と結びつきにくいために、このステージに力を入れていくのは、単独のクリニックでは難しいのが現実です。
しかし、矯正歯科治療の市場規模を拡大することは、長い目で見ると必要なことで、もっともっと矯正歯科治療の素晴らしさを業界全体として語っていく必要があると感じています。
また、すでに矯正歯科治療で美しい歯ならびを手に入れた方、治療をされている方達の市場拡大への後押しがShareの時代には求められます。

2.歯ならび治療に興味をもつ(interest)

矯正歯科治療についてなにかしらのきっかけで興味を持つステージになります。このステージから各クリニックのマーケティング活動は本格化していきます。

3.歯ならび治療について詳しく調べる(Search)

矯正治療は、ほとんどの方にとってはじめての治療になります。知人に聞いたり、インターネットで検索したり、情報収集をスタートしていきます。
「矯正治療はどんな治療なのか」、「矯正治療は痛いのか」、「どれくらいの期間がかかるのか」、「治療費はいくらぐらいかかるのか」など、矯正歯科治療について調べていきます。調べることによって、矯正治療への不安や期待、疑問などが顕在化してきます。具体的に、自分の場合はどうなのか、や子どもの場合はどうなのか、と情報収集を進めていきます。

4.どこで治療を受けるか医院選びをする

なんとなく矯正歯科治療の知識を得て、治療の必要性を認識したら、もしくは矯正治療の必要性を確認したいと思ったら、次は医院選びのステージに入っていきます。
しかし、ここで問題なのが医院選びをしている患者は自分の知っている範囲の基準でしか医院選びができないということです。
例えば、自宅から通院しやすいかどうか、土日診療しているか、平日は遅くまで診療しているか、治療費はいくらぐらいか、等治療以外の部分で、しかもなんとなくしか医院選びができません。
なんとなく、という言葉を多用していますが、患者は矯正歯科治療の専門家ではないため、また過去に経験したことのない治療であるため、医院選びの基準を持ち合わせていません。そのため、こちらから医院選びの基準を示してあげる必要があります。
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